アラン・バザール(フランス芸術協会(ル・サロン)絵画部門代表)

フランス芸術協会(ル・サロン)絵画部門代表
アラン・バザール

画家・河内美穂は、外見でなく本質を捉えようとするアーティストである。彼女が取り扱うテーマは多岐にわたっているが、インスピレーションの源を通じてとりわけ湧き上がってくるのは、その静謐な個性。例えば、花が象徴的な意味を持つ作品『Mariage』では、人生の出来事が自然の周期の中で生起していることを、静かに、実に静かに暗示している。

河内作品の特徴の一つに、人物像が多いことが挙げられるだろう。彼女はモデルの内面描写や隠された感情の描写に優れている。ここに掲出した4つの作品、『想う』『再開』『みつめて』『聞こえる』の心理的主題について考察すれば、人間の感情をキャンバスに再構築する能力に秀でていることが読み取れるはずだ。

このホームページを鑑賞すれば、彼女が水彩画の高い技法を体得していることがすぐ分かる。さらに油彩画においても、卓越した技量を発揮している河内。マティエールやキャンバスの適切な使用といった基本はもちろんのこと、表情豊かな人物像を永久に後世に残すことを可能にする表現レベルにまで達している。

ここからは、徹底的な分析に値する河内作品それぞれについて言及しよう。繊細なその力を味わって欲しい。

『Dozen Roses』は、おそらく“ウェットインウェット”という油彩画特有の技法を駆使して描かれた作品。その美しい効果で、量感のある花々が幻想的に浮かび上がっている。『bloom』そして『Mariage』の素晴らしい構図の中で目を引くのは、鮮烈な色彩だ。見事にコントロールされた奔放な筆使いで絵画空間に重ねられたそれらの色は、驚くべきレリーフ(浮き彫り)効果を生んでいる。日常的なテーマを扱った一連の作品のうち、『想う』はブルーと優しいイエローを基調とした色彩で、魂が現実を離れて遊んでいるような場面を、きわめて瞑想的で安らぎに満ちた情感で表している。『再開』はパステル調で描かれた若い女性の表現が見事で、河内はこの作品で自らの芸術の頂点に到達したといえるのかもしれない。『みつめて』『聞こえる』『Audrey』の3つの作品でも、精緻な筆とクオリティは顕在。さらに構図も素晴らしい。『太陽』と『月』は苛烈な想いを内に秘めた、燃えあがるかのようなスタイルの作品だ。これらは河内が豊かな力量を持つ魅力的な作家であることを証明している。

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